山彦 - (EPUB全文下载)

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山彦  
ヤマダ マコト

 
  
 
 

      表紙イラスト 橘冥紗
 
 

  目次
 
 
プロローグ

 
 
第一章 稜線の記憶

 
 
第二章 市政の闇

 
 
第三章 光なき瞳

 
 
第四章 悪意

 
 
第五章 風の導き

 
 
第六章 糸口

 
 
第七章 生と死

 
 
第八章 聖域

 
 
第九章 逸史

 
 
第十章 襲撃

 
 
第十一章 エダカが見る夢

 
 
第十二章 点と線

 
 
第十三章 消失

 
 
第十四章 山彦の少年

 
 
第十五章 邂逅

 
 
第十六章 夕日

 
 
第十七章 トキの望み

 
 
第十八章 異変

 
 
第十九章 飛翔

 
 
第二十章 対立

 
 
第二十一章 奇跡

 
 
第二十二章 我が家

 
 
第二十三章 決意

 
 
第二十四章 反乱

 
 
第二十五章 時の向こう

 
 
第二十六章 成就

 
 
第二十七章 残光

 
 
第二十八章 死者の森

 
 
第二十九章 夜空を駆ける

 
 
第三十章 災厄

 
 
第三十一章 夢の谷間

 
 
第三十二章 解放

 
 
エピローグ

 
 
山彦のできるまで(あとがきに代えて)

 
 
 

   
 
 ――これらの深山には神武東征の以前から住んでいた蛮民が、我々のために排斥されられ……その大部分は死に絶え乃至は平地に下ってわれわれの文明に同化したでもあろうか、もともと敵である。少なくもその一部分は我慢をして深山のそこに踏みとどまり野獣に近い生活を続けて、今日までも生存してきたであろうと想像するのは、強(あなが)ち不自然なる空想でも無かろう。
 
  
 
       柳田國男「妖怪談義」より
 
  
 
 

   
 
プロローグ
  
 
  
 
  
 
 ――とんとむかしがあったけど
 
  
 
 

   
 
  【1】
 
  
 
 風が光る。木々が喜びの声をあげる。
 
 顎を上げると、鮮やかなコントラストを成す雲の影が、すっと通り過ぎて行った。
 
 上空は、やや強く吹いているようだ。
 
 八月が終わった。
 
 空も、ブナ林も、川の流れも、まだまだ夏一色の様相だったが、それでも、風の感触や、クズの葉の隙間から伸びるススキの穂に秋の訪れが感じられた。
 
 笹岡雄三(ささおか・ゆうぞう)は、時折、空を眺めながら、センター裏の空地で草刈り機を左右に動かしていた。加茂川上流の粟ヶ岳(あわがたけ)登山道入り口、加茂市営ビジターセンターの管理人として、きょう一番の大仕事がそれだった。
 
 草刈り機がおよそ十往復するたび、天を見上げる。
 
 別に空が見たかったわけではない。七十歳を超え、立ったまま地面を見下ろす作業を続けるのは、腰や背中、そして首筋に負担がかかる。それだけのことだ。肉体の老化がそうさせているのだ。
 
 笹岡は、腰を伸ばすと大きく息を吐いた。
 
 まだまだ衰え知らずだと自負している太い腕に、日が照り付ける。
 
 本当は、気温が上がる前にこの雑草をやっつけてしまいたかった。しかし、思わぬ仕事が増えたために二時間ほど作業が遅れた。さらに後始末やら日誌の記入やらを片付け、草刈りに取り掛かったのは、結局、午前十時を過ぎてからになってしまった。
 
 それでも、風があり、覚悟していたほどの暑さにならなかったのは幸運だった。
 
 きょうは、一日おきに顔を出す県の自然保護観察官も来ない。
 
 あの慇懃無礼な東大卒の若造に茶を淹れずに済むだけでも気分がいい。いくら東大を卒業したとして、大学を出てたった三年やそこらで世の中の何が分かるというのか。
 
 ――それにしても、だ。
 
 軽快に音を立てて左右に振れる草刈り機を見ながら、改めて思う。やはり、山の地力は、平地の田畑のそれとは違う。我が家の家庭菜園は、夏場に一カ月ほったらかしでもたかだか知れているが、ここの雑草ときたら――。同じヒメジョオンやススキ、ブタクサ、オオエノコロクサでも成長スピードがまったく違う。一カ月で人の背丈ほども伸びるのだ。
 
 昆虫も沢山いる。お盆前に麦藁帽子をかぶって刈ったときには、うるさいほど鳴いていたキリギリスもすっかり影をひそめた。代わりに、草刈り機の騒音に驚いて飛び立つバッタの姿があちらこちらに見られるようになった。
 
 同居する八歳になる虫好きの孫に「大物がいたら捕まえてきてね」と頼まれているが、どれも羽を広げて飛翔する姿は、立派に見えて仕方ない。トノサマバッタの一匹でも捕まえてやろうとは思うが、いくら体力に自信があるといっても、七十を過ぎた年寄りに捕まる間抜けなバッタはそうそう居ない。
 
 数年前、四十坪ほどのこの空き地に、登山客向けの水洗トイレを建設する事業が持ち上がった。しかし、設計委託を終え、いよいよ建設工事を入札する段階で民主党政権にとって代わったために、あてにしていた補助金交付が棚上げされ事業が頓挫。こうして運動ついでに暇なときに草を刈るだけの無駄なスペースになっていた。
 
 現在の古い小さな男女共同トイレはたしかに不便だし、登山客に申し訳ない。しかし、急を要する問題とも思えなかった。地区の自治会長でもある笹岡は、会合などで市役所に足を運ぶたびに、職員に「だいたい障害者用トイレでないと小便できないようなヤツが登山するものかね」と話して回っていた。強がり半分だが、残りの半分は本音だ。とかく補助金を余さずに使わなきゃいかん、と思いこむのは役所の悪癖だ。そもそも国庫支出金も我々の納め ............

书籍插图:
书籍《山彦》 - 插图1
书籍《山彦》 - 插图2

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