楽園への清く正しき道程 庶民出身の国王様がまたご愛妾を迎えられるそうです_楽園へ.epub - (EPUB全文下载)

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楽園

への清く正しき道程
庶民出身の国王様がまたご愛妾を迎えられるそうです
野村美月
電子版 ファミ通文庫
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 目次
プロローグ
第一章 女騎士の、ありがたくないご縁談の件
第二章 浮気者! と亜麻色の髪の乙女は叫んだ
第三章 女の戦い~王妃様はヤル気満々です
第四章 あなたにお薦めのお嬢さん
第五章 国王陛下ご入場
エピローグ 二番目と三番目
四番目と五番目
赤いずきんの女の子は、狼さんに食べられたかった
あとがき
プロフィール
 まばゆい日差しが僕らの小さな王国に降

り注

いでいた、ある夏の日、僕はいきなり王様になった。
 庶民として生まれ庶民として育ち、町の服屋で接客をしながらのんきに生きてきた僕はただただ驚

き困

するばかりで、大きな流れに身を任せることしかできなかった。
 この僕が王様だなんて。
 自覚も自信もずっと持てずにいたし、王様なんて不自由で損なことばかりで、やめたいとさえ思っていたけれど。
 きみに出会って冒険をともにして、なにかが変わって、
 きみに出会って恋をして、国王であることの苦悩を自覚して、
 まっすぐで愛らしいきみたちに出会って、今の僕だからこそ、できることがあると知った。
 だから今、僕は──。
 今年初めての白い粉雪が、城の窓の外を可

に舞う朝。
 ローデシアの国王ルドヴィークは、ハーブの香りのするやわらかなベッドでまどろみながら、愛らしい声を聞いていた。
「国王様、朝ですよ。そろそろお目覚めになってください」
 控

えめに優しく呼びかけてくるその声に耳が甘くとろけそうで、まぶたを持ち上げると、ふわふわの髪

を水色の絹のリボンで綺

に結った可

らしい女の子が、勿忘草

のような瞳で、おだやかにルドヴィークを見つめていた。
「おはよう、ミーネ」
 口元が思わず笑みこぼれる。
 ミーネもつつましく微笑

んで、
「おはよう、ございます」
 ささやくような小さな声で返し、
「朝食は……わたしがお城の厨

をお借りして、作ってみたんです。国王様が町のご実家でいただいていたような、素

な卵料理やスープを召し上がりたいとおっしゃっていたので……。それなら、わたしでも……作れるかと思って」
 ワゴンで運んできた、ふんわりと炒

った卵や、かりかりのベーコン、茹

でたじゃがいものサラダやキャベツのスープなどを、丁

にテーブルに並べてゆく。
 白い湯気が美

しそうな香りを運んできて、ルドヴィークのために頑

ったのだというミーネの表情もますます優しく可憐で、
(ああ、夢見たとおりの新婚生活だ。こんなに可愛いお嫁

さんが僕のところへ来てくれて、朝食も作ってくれて、幸せだ)
 と感動に打ち震えてしまう。
「国王様のお口に……あうと良いのですけれど」
「二人きりのときはルディだろう」
 ルドヴィークがベッドから足をおろし、優しく注意すると、
「あ、ごめんなさい」
 つぶやいて、頰

を染めて恥じらいながら、
「る……ルディ」
 小さな唇

から優しい声がこぼれるのに、また幸福感でいっぱいになり、後ろから両手で抱きしめて、
「ありがとう、ミーネ」
 と、おはようのキスをすると、首筋まで真っ赤になってしまった。
(ああ、本当に可愛い)
 うっとりしながら、もう一度キスしようとしたとき。
「そこまでです、国王様」
 背後で、申し訳なさそうな声が響いた。
 黒髪に眼鏡

をかけた地味な男性官

──クラウスが、いつの間にか居
心地

悪そうに目を伏せて立っている。
「子作りに繋

がるようなご行為は、王妃様に男子のお世

ぎがご誕生されるまで一切禁止です」
 クラウスも、国王とその愛

の生活を四六時中監視し、きわどいところで邪

に入るなんてことはしたくないのだろう。ルドヴィークたちとなるべく目を合わせないよう視線を泳がせ、口調も歯切れが悪い。
 が、クラウスの上司でもある国王の侍

アーデルハイドから、国王様の最初のご子息は北の大帝国から政略結婚で嫁

いできたカテリナ王妃の子供でなければならない、万が一にも侍女上がりの愛妾とのあいだに先に男の子が生まれてしまったら、国家的大問題だと、厳しく言われているに違いない。
 クラウス個人としては、先日のヒンメル長官の不正告発に関する司法取引の件で、ルドヴィークに恩義を感じてくれているようで、それと上司の命令との狭

で苦悩しているようだった。
 そこはルドヴィークのほうも、申し訳なく思う。
 クラウスは役目に忠実なだけで、悪気はまったくないのだ。
 また、即位するまで自分が亡くなった国王のご落

だなんて夢にも思わず、服屋の若旦那として市井で育った、庶民育ちで、血統的にも半分庶民のルドヴィークに、大陸一高貴な王妃を迎えて、二人のあいだに誕生した子供を次期国王にするのが国策的に正しいということも、理解している。
 が、
「朝のキスくらい大目に見てくれてもいいだろう。僕とミーネは新婚なんだから」
 目覚めの挨

............

书籍插图:
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