ワールドエネミー 不死者の少女と不死殺しの王_ワールドエネミー_ - 細音 啓 - (EPUB全文下载)

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ワールドエネミー
不死者の少女と不死殺しの王
細音 啓
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 Contents
プロローグ
File.1 『未来の聖女と史上最強の代行者』
Intermission 『ゼロ事象─十一年前─』
File.2 『大敵ゼルネッツァ・A─異形を撒き散らすもの─』
特別付録 書き下ろし短編「ワールドエネミー」×「世界の終わりの世界録<アンコール>」
 ノアという人物について。
 わたしの知るかぎりのことを話すとするならば、まず、あの男はハンターだ。
 種族は人間。年齢は二十四。
 とにかく無愛想で、自身について多くを語らず、おまけに全身黒ずくめのコートを着ているせいで周囲から怪しまれることも多々ある。そうした情報もないわけではないが、彼が「ハンターである」ことの重みに比べれば些

な話だろう。
 ノアという男は──
 史上最凶の
怪異
に育てられた史上最強の
怪異
ハンター
、だ。
 この世のすべての怪物たち。すなわち吸血鬼

、獣人

、屍鬼

、幽魔

、魔獣

等々、ありとあらゆる脅威に対する人類の切り札である。
 代行者連盟

によって階級『A』を越える前代未聞の階級『XA』を授与された男。人類の宿敵たる「大敵

」にたった一人で立ち向かうハンター。
 大敵殲滅者

、と。
 いつしか怪異

からもそう恐れられた彼について。今晩は語るとしよう。
 始まりは──
 そう、わたしと彼の出会いから。

「怪異

を追っている。隔離指定された凶悪な吸血鬼

だ」
 夕暮れ間近の午後四時。
 繁華街を歩く人影もまばらになる頃に、グレゴリオ聖教教会の扉は、男の一言と同時に蹴り開けられた。
「逃走ルートから、この町に接近した可能性が高い。町に潜伏された場合が面倒だ。吸血被害を出したくなければ今すぐ町の不審人物を洗いだせ。身分証を提示させ、確認できない場合には頭から聖水をありったけぶっかけろ。応じない奴

は俺が直接──」
「え!?
 ま、待って。待ってくださいってば!」
 扉を開けるなり機関銃の一斉射撃じみた早さで喋

りだした黒ずくめの男。
 そんな彼の前で、シルヴィ・クリアネットはあわてて手を振った。
「あの、もう一度最初からお願いします。どういうことでしょう。吸血鬼

が……怪異

が現れたと聞こえた気がしたんですが」
「そう言っている」
 扉によりかかる姿勢から身を起こし、黒ずくめの男が気

げな足取りで教会の床を歩いてくる。
 今、この礼拝堂に信徒の姿はない。
 朝礼拝と夜礼拝のちょうど間の時間帯。シルヴィも教会の掃除を終えてようやく一息つけるとほっとしていた。その矢先のことである。
「俺はノア。ノア・イースヴェルト、北アルトリア代行者連盟

の代行者

だ」
 伸ばした黒髪に、床につくほど丈のあるロングコートも黒。
 身長はブーツ抜きでも百八十センチを超えているだろう。
 顔立ちは端整ながらも目つきが悪いのか不機嫌なのか、向かい合っているだけで後ずさりしたくなるほどに眼光が鋭い。
 ……どうしよう絶対に怖い人だ。
 ……しかもわたしが絡まれちゃった。
 そんな内心の呟

きが。
 代行者

ノアと出会った当初、シルヴィが抱いた印象だった。
「この教会のシスターだな」
「シスター見習いです……シルヴィと申します」
 グレゴリオ聖教の青の修道服、その裾をぎゅっと握りしめてシルヴィは頷

いた。
 シルヴィ・クリアネット──
 色素の薄い金髪に、淡い碧

が特徴である少女である。
 この春で十七歳。
 聖教法では立派に成人扱いされる年齢だが、髪の毛が外向きに跳ねて幼稚っぽく、声質も幼いため、町の住民からは今もシルヴィ「ちゃん」と子供扱いされてしまう。
「見習いか」
 値踏みするように、ノアと名乗る代行者

に頭から靴先まで眺めまわされた。
 聖教に尽くす身とはいえシルヴィも若き乙女

だ。
 修道服の上からでも女性らしい身体

の線はわかってしまうし、何よりじっと顔から身体まであからさまに見つめられるのは抵抗がある。
「あ、あのですね!」
 一歩前に出る。
 初対面の少女を無遠慮に眺めまわすのはあまりに無礼な行為でしょう。そうシルヴィが口にするより先。
 ノアが、やれやれと肩をすくめてみせた。
「なるほど。とりあえず吸血鬼

がシスターに化けているわけではないらしい」
「は、はい!?

「吸血鬼

が町に潜伏している場合にまず考えられる可能性だ。聖教の教会は怪異

討伐に長

けた神父とシスターの溜

まり場

だからな。そこを先に潰してしまえば、あとは邪魔者もなく町を支配できる」
 淡々と告げる黒ずくめの代行者


 そう、つまりこのノアという男は教会を訪れるなり、初対面のシルヴィを前にいきなり「怪異

が人間に化けているのでは?」と疑ってかかっていたのだ。じっと凝視していたのも、その挙動から正体を見破るためだったらしい。
「気にするな」
「気にします! よりによって怪異

に疑われるなんて」
「もう済んだ話だ。そして俺の要求を先に伝える。ある吸血鬼

が町に潜伏した可能性が高い ............

书籍插图:
书籍《ワールドエネミー 不死者の少女と不死殺しの王_ワールドエネミー_  - 細音 啓》 - 插图1
书籍《ワールドエネミー 不死者の少女と不死殺しの王_ワールドエネミー_  - 細音 啓》 - 插图2

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