三千世界の鴉を殺し - (EPUB全文下载)
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三千世界の鴉を殺し③ 目次
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あとがき
1
宇宙港の構造は、その規模と検疫室
の存在をのぞいて基本的に通常空港と大差がない。
バーミリオン星の宇宙港は、首都カーマインに一ヵ所存在するだけだった。にもかかわらず、発着が旅客便と貨物便の一日一回ずつという事実は、ここがいかに辺境
の惑星であるかを物語っている。
その一番近い惑星アンバーからの星間定期便でさえ、四日に一回休航するありさまだった。
カーマイン基地に駐屯
する銀河連邦宇宙軍陸戦部隊は、惑星軍でいうところの一個師団、約一万五千名。
六連隊あるうちの二個連隊がひと組みになり、一ヵ月交代で宇宙港警備を担当する。各連隊は、三ヵ月に一度、警備の順番が回ってくるたび、宇宙港と空港を交互に担当していた。
第六連隊の今月の受け持ちは宇宙港。
旅客ターミナルと貨物ターミナル、管制塔と整備場、シティ・サイドの三ヵ所が、三個大隊に割り振られる。
各大隊に所属する四個中隊が、利用客の多い日中勤務に二個中隊、準夜間勤務と深夜勤務にそれぞれ一個中隊という具合に、一週間単位のローテーションで配置につく。
転任二ヵ月目を迎えるルシファード・オスカーシュタイン大尉の中隊は、シティ・サイドの日勤から始まった。
大気圏
と宇宙空間両用のエンジンを搭載
したシャトルが、一日二回宇宙ステーションを往復するほかは、政府の特別機もしくは軍の宇宙船でも飛来しない限り、宇宙港の滑走路と発着床は、ただの空き地のままだった。
軍と共用している通常空港のほうは、主要都市を結ぶ定期便が、頻繁
に発着しているだけに、どうしても宇宙港の閑散
としたようすが際立
つ。
「一日一便しかないわりには、あまり見送り客がいないのね」
シティ・サイド・エリアの警備主要地点が映し出されたモニター群をながめて、中隊副官のライラ・キム中尉が言った。
宇宙港と空港警備の兵士は、全員都市パターン迷彩の戦闘服を着用し、グリーンのベレー帽をかぶっている。直接現場の監督をせず、デスクワークと見回りが仕事の士官も、戦闘服着用は義務付けられていた。
メリッサ・ラングレー大尉の通信中隊から派遣されている通信兵のひとりが、宇宙港警備の勤務は初めてになる転任士官の彼女に説明をする。
「乗客の大半は、商用で出張するビジネスマンですから、わざわざ見送りにくるものはいません。着陸便も同じです。バーミリオン星には、ほかの惑星にない観光資源があるわけでもありませんし、保養地やリゾート地はあっても、わざわざこんな辺境惑星まで保養にくる物好きはいないでしょう。大学受験や卒業、入学、就職のシーズンになれば、他惑星に向かう人間の家族たちが見送りに来るので、それなりに別れを惜しむ姿も見られます」
「あなたが、ここの警備に配置されるようになってから、どんな事件があったの?」
「そうですね……。一番よくあるのが置き引きやスリです。派手なところでは、三角関係を清算しようとした果ての殺人もありました。愛人と旅立とうとした妻を、追ってきた夫が射殺した事件です。それから、最近三度ほど続きましたが、都市警察の刑事が、惑星外に高飛びをしようとしたイエロー・タウンの犯罪者を空港内で逮捕しています」
「都市警察との関係は良好?」
銀河連邦宇宙軍と銀河連邦警察は、しばしば生じる縄張
り争いのおかげで仲が悪い。それと同様に、銀河連邦惑星軍と都市警察も惑星内が活動範囲なだけに、これもまた伝統的に仲が悪い。
軍同士、警察同士なら仲がいいのかと言えば、これはこれで決して友好的と言えないのが、むずかしいところだった。
かように縄張り意識というのは、どこの組織でもやっかいかつ、重大な意味を持つ。
果たして、通信兵はシニカルな笑みで片頰をゆがめ、なげやりに言った。
「全部事後承諾です。どうせ俺たち、ナメられてますから」
「どうして?」
「わが基地は、民間の警備会社に委託
しようにも、その経費が出ない赤字の宇宙港を代行して警備することで、かろうじて存在意義があると思われています。この近辺に仮想敵すらいないのは、だれもが承知のことですし」
「それは……ちょっと、くる
ものがあるわね。──〝連邦軍旗にかけて〟! 都市警察のやつらが、面と向かってそれを言いやがったら、絶対にアゴの骨砕いてやる」
一見クールに見えるものの、沸点
の低いライラは、こぶしをにぎって獰猛
にうなった。
周囲の兵士は、女性士官の怒気
を含んだ過激な言動に目をむいたが、すぐに全員破顔
する。
彼らは、軍人の誇りがなんであるかを知っている新しい上官を、すっかり好きになってしまった。
「一同まことに同感あります、中尉殿!」
「しかし、俺たちなんてまだマシなほうです。バーミリオン惑星軍は、AFS
が一機も配備されていませんから」
別の通信兵が訴える。
「……一機も?」
信じられないことを聞いたライラは、オウム返しにつぶやいたきり絶句した。
宇宙軍の軍事費は、銀河連邦議会の承認を得た年間予算を連邦軍本部が、各方面軍に割り当てる。
さきほど通信兵が言った通り、バーミリオン星の周辺宙域は、仮想敵さえいない。したがって、カーマイン基地にAFS──陸上戦用人型兵器が二十二機しか配備されていないのも、予算配分の優先順位を考えればしようのないことだった。
だが、惑星政府が組む予算によってまかなわれる惑星軍が、カーマイン基地を上回る貧乏所帯だとは、予想だにしなかった。
「イエス・マム。AFS一機が、ひとつの基地の年間予算に匹敵するという話です。この星の連中は、惑星軍を災害救助隊程度にしか思っていません」
「……気の毒すぎる……」
同じ軍人として、惑星軍に所属するものたちの胸中をおもんぱかり、瞑目
した彼女のつぶやきに、シティ・サイド監視コントロール・ルームにいたほかの通信兵たち ............
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