陰陽師信長 - (EPUB全文下载)

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陰陽師

信長
土岐信吉 


信長 目次
第 一 章 義元の首
第 二 章 言

第 三 章 呪

返し
第 四 章 姉川合戦
第 五 章 比叡山焼討ち
第 六 章 信玄の死
第 七 章 小谷落城
第 八 章 長島一向一揆
第 九 章 長篠合戦
第 十 章 安土城天主
第十一章 怨 霊
第十二章 信長の魄
あとがき

装丁──多田和博
装画──西口司郎
第一章 義元の首

 ──いたぞっ……彼奴

だ……──
 信長は、くわっと眸

を瞠

いた。渇いた喉

が、痛い。つんのめるように足を運んできた信長は、蹠

に松の根を刻

み辛うじて踏

まった。その拍子に鎖鉢巻から血の糸が、すうっと垂

れて頬を伝わり落ちた。
 永禄三年(一五六〇閏

)庚

五月十九日、申

の刻

(午後四時)を少し過ぎていた。

 松林の外、天と地に漲

る白

の中、二

の旗

が、血腥

い風に蒸

し上げられ喘

いで見える。鉦

、太鼓、武者押しの喚声が、轟

く。
 田

の南、泥池を背に三百余の騎馬武者が、円陣を組み、その中央に塗
輿

が、凜

として静まっていた。輿の中、今川治




は、唇を
んで背筋をぐっと伸ばした。
 ──この坪の何

かに居る信長の退路は、松井宗信が、塞

いでおる筈……。大

附近の三宅右近の千騎が、到着すれば、結着がつく。あと小

(三十分)だな……──
 義元は、濃く塗り直した頬の白

が、浮き気味なのが嫌で、

(射弓用の革手袋)の右手で目

の上を刷

く。ほんの少し黛

が、指先を染めた。
 ──暑い。化粧が、くずれおったか……──
 義元は、眉間に深い縦

を寄せた。

 びしっと小枝の折れる音。間

、信長は、一歩踏み出し、腰を落として振り向いた。
「ようご無

で……」
 掠

れた声は、髭

の安井新左衛門。丹羽長秀配下の強

の名手だ。背後に浅


ら弓衆三十余が、息を切らせていた。
「待て待て。此

からだと、持

(射程距離)が、遠すぎる。儂

が……」
 言いかけた信長は、萎

びきった草原を塗輿めがけて這

い寄る味方の黒武者の影五つを目

く見つけた。得意の遠

である。
 ──危いっ!!
 敵に見付かれば、それまでだ──
 頭が、真っ白になった信長は躍り出た。走る。大手を広げ、此

よがしの大

を切った。肺腑を震わせる絶叫。胸に絡まる想いが炸裂した。
「信長だあっ!」
 木

する声。魔の空白。凜とした騎馬の陣形が、ぐらっと崩れた。今川の馬

・岡崎十兵衛は、はったと信長を凝視して身を震わせた。
「きえっ!」
 兜

の鍬

が、烈日に光った。入

の袖が

り、馬を竿

ちさせた十兵衛は、手

を引き絞

り馬首をぴたりと信長に向けた。
「若造めっ! 今

の別れぞっ!」
 眉

の下、冷たく光る双

。たっと馬腹を蹴る。大

の槍先が、地面すれすれに光を弾

く。他の馬の嘶

きと蹄

の響きが怒

となって後を追う。仁王立ちの信長は動かない。まだ動かない。じっと待つ。放射する殺気。黒影が視界一杯にのしかかる寸前、信長は、くるりと踵

を返し松林に跳び込んだ。
「しゃっ!」
 喚

ぶ十兵衛。歯を喰いしばり手綱を絞り左に馬首を向ける。追尾する六騎も続く。蹴散らされた泥濘が舞い上る。その時だ。
「殺

れいっ!」
 松林から跳び出た安井新左衛門は、尺

の弓をぎりぎりと引き、眼前の馬腹に根太巻の矢を叩き込んだ。馬は嘶き、どうと転倒。投げ出された十兵衛は、立ち直ることもできず、のしかかった信長に頸

を貫かれた。三十余の弓衆は、新左衛門を真似て敵の馬腹のみを狙う。羽根音が唸り、無人となった馬は狂奔し地に沈む。
 信長の所在を確認した今川馬廻衆は、一斉に馬から下りて横にひろがり包み込む様に殺到してくる。更に、左手の草原から敵の軍兵が黝

と姿を現わす。その数三百余。
「殿、これを」
 駆け寄った大兵の武者が朱槍を差し出した。太い眉は吊り上り眼光あくまで鋭く、八の字髭の下に堅く結んだ口

。どう見ても野

りの面

えは侍大将の一人・滝



であった。半顔を返り血で染めた信長は、白い歯をみせた。
「久助(左近のこと)は、何人だ」
「はっ。百五十ほどで……」
「よしっ! そちは弓

(左の方)を仕

れ」
 信長は、槍先で草鞋

の紐を切り、革

だけとなった。背後で左近の嗄

れ声。
「槍は、佩

と脛

の間を狙え。足の甲でもよい。動けなくすればよい。頸はいらぬ」
 莞

とする信長。疲労困

している筈の躰の芯に力が湧いてきた。口ずさむ。
何せうぞ 燻

んで 一

は夢よ ただ狂へ
 徒

となった敵の馬廻衆が迫ってきた。信長は、逆に大きく踏み込み躰を沈めざま、開いた敵の脇の下を斜め上に斬る。噴血と共に片腕がとぶ。転倒する血

れの敵は、後続の武者たちと縺

れ合い将

しになる。信長は、委

わず前に出る。歩一歩。唸りをあげ風を切る重量を鉄

で払う。しぶとく絡み巻 ............

书籍插图:
书籍《陰陽師信長》 - 插图1
书籍《陰陽師信長》 - 插图2

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