花嫁のやんごとなき事情6　～円満離婚に新たな試練!_～ - (EPUB全文下载)

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(仮)花嫁のやんごとなき事情
～円満離婚に新たな試練!?～
著者　夕鷺かのう
イラスト　山下ナナオ
電子版 ビーズログ文庫
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　　目次
プロローグ
１章　悪女、はじめました
２章　呼べば出る男
３章　本音の在り処
４章　かたくなな若獅子
５章　夢を見るのは
６章　背中合わせの想い
エピローグ
黒き龍の誤算
あとがき
　舞い上がる、というのはこういう状態なんだろうか。
　エルラント帝
国

第三皇
子

、泣く子も凍

る『毒
龍
公

』として名高いクロヴィス＝クルヴァッハ＝エルラントは、ぼんやりと虚
空

を見つめながら考える。数日前、妻が頰

にくれた、淡
雪

のように軽い口づけを思い出すたび、柄

にもなく浮
足
立

つのだ。
「ヤダ、なにニヤついてんの、不
気
味

なんだけどん」
　彼女の養

い親にあたる吟遊詩人

に気味悪がられたので、正
直

に訳

を白
状

してみた。すると、あまり面
白

くなさそうに「ふうん？　なあんだそんなことー」と鼻を鳴らされる。
「べっつに調子こくほどのことでもないし？　ただの感謝のしるしでしょん。アタシやうちの孤
児
院

の子たちには当然、朝採

れた卵をくれた隣

のおばちゃんにもやってたけど？」
「そうなのか？　驚いた。まさか、卵をくれる隣人程にまで印象がましになる日が来るとは」
　素直に喜ぶと、「あんた……」と、なぜか吟遊詩人

にはドン引かれた。
「男なんて日替わり定食よ！」
　とは、フェルが、ユナイア王国王
都

ベルファスティスの孤
児
院

にいた頃耳にした、ご近所随
一

の悪
女

と名高いパン屋の娘さん某

の迷
言

である。
　彼女は言っていた。「肉でも魚でも野菜でも、骨や芯

になるまでしゃぶったら捨てるでしょ。それと同じよ。お金なんて自力で稼

ぐものじゃないわ。男を振り回して、貢

がせるものなの」と。
　当時は、「いや、残った骨や芯は捨てずに煮出してスープにするし、お金は自分で稼がなきゃ。他人の金を食いつぶすとか寝
覚

めが悪いったらない」と突っ込んだものだが、今となっては後
悔

する。こんなことになるなら、彼女の手
管

を、もっと真
面
目

に学んでおけばよかった。
（まさか、自分が『働いて稼ぐために、男を振り回して捨てる』ことになるなんて!?
）
　この、恐怖の複
合
技

に挑
戦

することになった理由は、このななかまどの月の第一日にあたる立春

の直前に、自国ユナイアの王様、セタンタ＝マクネッサ＝ユナイア陛
下

が、ぺろっとフェルに下していった、とんでもない命令変更である。
　最初は、「思わずドブに捨てたくなるような毒
妻

を演じて、夫に嫌

われて離
婚

してこい」とのご下
命

だった。それはそれで難
題

だったが、今ほどではない。
（あの人を誘
惑

して骨抜きにして籠
絡

して、さんざん振り回した挙

げ句

に捨てるって……どうすんの!?
）
　フェルは、鮮やかな夕暮れ色の眼

に宙

を映し、ぼんやりと「あの人」こと、このたびの誘
惑
任
務

の相手である（仮）夫の顔を思い浮かべた。
　なにせ故
郷

ユナイアでは、「立てば毒
薬

・座れば鬼
畜

・歩いたあとには地
獄
絵
図

」と名高いエルラント帝
国

第三皇
子

『毒
龍
公

』クロヴィス殿
下

である。
　涼

やかな青い瞳

と、長く伸ばして編んだ黒髪の印
象
的

な──あの、見
目
麗

しさと性格の悪さが反比例する嗜
虐
野
郎

に、さんざっぱら振り回された覚えはあるが、ついぞ振り回したためしなぞない。
　そもそも誰かを誘惑したことがない。フェルのお仕事人生においても、男性をほにゃららする関係だけは、携

わったことがないのだ。
　しかもそれが──好きなふりをするどころか、実際に、本当に、好きな人とくれば。
（どど、どうしよう!?
）
　フェルは悩んだ。
　悩んだ結果、まずは、なんでも話せる親友に相談することにした。
「あのさラナ。旦
那

さまを骨までしゃぶって捨てるって、どうしたらいいと思う？」
「……あんたはまた、一体どこで何を吹き込まれてきたわけ」
　綿

のキャップの中にまとめた黒髪に、ちょっときつめの印象の琥
珀

の瞳。フェルの長い緋
銀

の髪を梳

かしていた侍
女

のラナは、質問を聞くなり、象
牙

の櫛
先

をぎしぎし頭にめり込ませてきた。
「ぎゃああ痛い痛い痛い！　き、訊

き方間違えただけだって！　でー、あー、旦那さまと自然に距離を縮めるって、どうするんだと思う？　ってこと！」
「何をどう間違えたのかとっても気になるけど、まあいいわ……。なに、あんた、殿下に嫌われて別れる予定じゃなかった？」
「状況が変わったんだよね。あんまり詳しくは話せないんだけど、使命が、嫌われろから目
下

好かれろになったというか」
「え？　それって、このあいだいらしたセタンタ王じきじきのお達しなの？」
　フェルが頷

くと、ラナはなぜか、とても複
雑

な表情になった。
「……あのねフェル。あんた本当に、 ............

书籍插图：

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